私だけを愛してくれますか?
みんなが用意してくれた資料を持って、足早に副社長室へ向かう。
前室には心配そうな顔の副社長の秘書がいた。男性秘書の結城さんだ。
「トラブル発生のようですね。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。中に入ってもいいですか?」
「どうぞ。頑張ってくださいね」
背中を押してくれるような結城さんの言葉に会釈を返して、扉をノックした。
「入れ」
渋いバリトンボイスが聞こえる。
扉を開けて副社長室に入ると、待ち構えていたのは、泣きそうな顔の袴田さんと吉田部長。
そして、大きなデスクに座り、端正な顔を苦々しく歪めていたのは、『くらき百貨店』副社長、倉木大(くらき ひろむ)だった。