私だけを愛してくれますか?
*◇*◇*
催事部に戻ると、みんなが心配して待っていた。
そりゃそうよね。やっぱり、優雅にコーヒーなんて飲んでる場合じゃなかった。
お待たせしてすみませんという感じだ。
「『いわくら』にお願いすることになったけど、交渉は副社長がしてくださることになったの。今日の午後には結果がわかるから、それまでは待つことにしましょう」
ホッとした空気が漂う。やはり、副社長が乗り出してくれたことで、みんな安心したんだ。
「私がなんとかする」と言ったものの、私では交渉がうまくいかなかったかもしれない。
なんせ、イベントまでの時間が短すぎる。しかも、他のお店が出られなくなった代わりに、なんていう失礼な理由なんだし。
『副社長なら任せても大丈夫』
そんな風に社員に思わせるカリスマ性は、会社の長となる人には必要だと思う。
うちの会社の御曹司は、性格はともかく、仕事に関してはいい方だなと再認識をした。
「副社長なら何とかしてくれますよね?」
瑠花ちゃんがホッとしたように呟く。
自分の企画したイベントが頓挫しかけたんだもの。そりゃホッとするよね。
「きっと大丈夫よ」
安心させるように肩を撫でたが、瑠花ちゃんの様子を見て、怒りが再び込み上げる。
おのれ、阿保ボンめ!
うちの可愛い班員をよくも苦しめたな。そのうち、かたきを取ってやる。
メラメラと闘志を燃やしながら、アクシデントで滞っていた仕事を猛然とこなしていった。