私だけを愛してくれますか?
イベント当日の朝、副社長から直接声をかけられた。
あの休日の朝以降、どうもぎこちなさが残っている。仕事仕様で話していても、素の私を知られているので居心地が悪いのだ。
「全体の管理もあるから大変やろうが、『いわくら』のサポート頼むぞ」
念を押されなくてもわかってますよ。やけに志乃さんを気にしますね。
「承知しております。志乃さんが困ることのないように気をつけます」
少しムスッとする。
「なんや、志乃ちゃんにやきもちか」ハハハと笑って、副社長は去っていった。
そんなわけあるかっ!
私も、ムッとする必要ないでしょ!自分自身を叱りながら、憤る。
でも私がムッとしたことがわかったってこと?
感情が表情に出始めているのかも。気をつけねば。
緩んでしまった副社長との境界線を、もう一度しっかりと引き直さないといけない。
背筋をスッと伸ばし、改めて表情を引き締め直した。