私だけを愛してくれますか?
イベントでは、私のイチオシの高級食パンも大人気で、『ほらね』と誰かに自慢したいくらい。
自分が誘致したお店が繁盛すると、やはり嬉しかった。
最終日、夕礼で副社長が挨拶をした。
沢山の人の前で堂々と話す姿は、威厳を感じる。
そりゃそうだ。老舗百貨店を継いでいく立場の人なんだから。
少し寂しい気持ちがするのはなぜなのか。最近、自分の気持ちがよくわからない。
最後に売り上げの良かった店舗の発表があったのだが、『いわくら』は第二位に入っていた。
志乃さんは無邪気に喜び、それを体いっぱいで表現する。この一週間、本当によく頑張ったと思う。みるみるうちに成長していく様子がみれて、私も嬉しかった。
こんな風に、自分の感情を素直に表す志乃さんが純粋に羨ましい。
「よかったですね」とお祝いを言うときに、私も自然と笑みがこぼれた。
副社長は「おめでとう」とわざわざ言いに来た。
しかも、個人的にジュースまでおごってくれる始末。坂井さんはともかく、私にまで!
「内緒やで」と言っていたが、当たり前だ。
出店してくれたお店はたくさんあるのに、どんな贔屓なのよ。
ただ、志乃さんをねぎらいたいだけでしょ。
ジトッと見ながら受け取ると、「可愛い女の子は特別や」と囁かれたので、ジュースを落としそうになった。
副社長め、さてはこの前の一件で図に乗ったな。吉木美織、一生の不覚。
いいですとも。勝手にからかってください。受けて立ちますから!
グビっとジュースを飲んで、メラメラと闘志を燃やした。