私だけを愛してくれますか?

*◇*◇*


「私、優吾と会うから!」

いい感じに酔っぱらっていた美織が突然叫んだ。

『蓮華』の大将と女将は、顔を見合わせて驚いた顔をしている。

「優吾って誰や?」叫んだ本人に聞くと、

「トラウマのきっかけを作った元カレです!」とカウンターをドンと叩いて答える。

「お、おい!美織。そんなこと言うていいんか?」

大将が慌てて止めようとするのを手で遮る。

「何があった?言ってみろ」

すると、美織は高校時代にあった話をペラペラと話し始めた。

「お前、絶対あとで後悔するぞ…」大将は頭を抱えて唸っている。

話し終わったあと、美織は「私、前に進みたい…」とつぶやいた。

「美織」

女将が優しく美織の頭を撫でた。

「がんばってみる?私と蓮がついてるから」

美織は子どものような顔でコクっとうなずき、カウンターにもたれて寝始めた。

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