私だけを愛してくれますか?
ふわっとした色素の薄い髪。優しい顔つき。優吾は思い出の中にいる優吾のまま、大人になっていた。
「美織…」
私の名を呼んだがその後が続かない。
「久しぶりやね」
私は努めて明るく声をかけた。
「ふすま半分開けとくから。なんかあったら呼べよ」
蓮は私の肩をポンとたたいて、出ていった。
「蓮と華とは、相変わらず仲良しなんやな。この前初めて来たとき、華が調理場から睨みつけてきて参ったわ」
優吾は頭を掻きながら、苦笑いをした。
「しょうがないんと違う?自分のしたことを思えば」
からかうように返す。
優吾に会う前はいろんな感情が渦巻いていたが、顔を見た途端、なぜか憑き物が落ちたように落ち着いた。
自分でも驚くくらいサラッと、過去のことに触れることができた。
十年以上年を重ねたことが、優吾の顔で実感できたからかもしれない。
大人になった優吾。お互い年をとったのだ。
優吾の前に座り、顔を見合わせる。優吾は少し泣きそうに見えた。
「まあ、ビールでも飲んで、気楽にいってくれ」
その場を和ませるように明るく言いながら、蓮がビールを運んできてくれる。
コップに注ぎながら、大丈夫かというように顔を覗き込まれたので、コクっと頷いた。
蓮が出て行くと、
「来てくれてありがとう」
優吾は照れくさそうに言って、自分のグラスを私のグラスにコツンと当てた。
そして、グイッとビールを飲んだ後、真剣な顔つきになり、私の顔を見つめた。