私だけを愛してくれますか?
ハッと時計を見ると、七時五分前。慌てて外に駆け出した。
家の前には、黒のSUV車が停まっていて、誰もが知っている外国車の印がついている。
副社長は、つやつやの車にもたれて待っていた。
車のCM? 外国車と副社長のコラボは凄すぎでしょ。
副社長は休日らしい服装で、黒のⅤネックのサマーセーターに、下はデニムだ。
普通の格好なのに、とんでもなくカッコいい。
男性と出かける経験など皆無の私には、副社長は上級者すぎる…
今日一日大丈夫なんかな、私。
不安を覚えつつも、促されるまま助手席に乗り込んだ。
「行きたい店は何軒くらいある?」
カーナビをセットしながら、副社長が訊ねた。
「実は八軒あるんです。でも、大変なら半分でも構わないので!」
さすがに厚かましいかと思って、付け加えた。
資料をカバンから出し副社長に見せると、住所を確認してくれる。
「そんなに離れてないから大丈夫や。山手の方は午後に行くとして、海側の方から回っていこう」
そう言うと、車は静かに走り出した。
京都から神戸は、高速を使えば一時間ほどだ。朝早いこともあって、車はスイスイと進んだ。
運転している男の人って、なんでこんなにかっこいいんかな。
横目でつい、ちらちらと見てしまう。余裕のない私に比べて、副社長は余裕たっぷりだ。
女の人を乗せる機会なんて、山ほどあるのだろう。
チリっと胸の痛みを感じるが、気づかないふりをした。