元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
陶器のようなきめ細やかな肌に、長いまつ毛。
目を閉じているからか少し幼い印象を受けた。
「…ノエル、今日パーティーでシャーロットに会ったの。リアム様とのことがあって…あの時はすごく傷ついたからもう会いたくないと思っていたわ。でもね、会ってみたら割と平気で…こっちがビックリしちゃった」
寝ている彼に、そっと話しかける。
もちろん、返事なんかないのはわかっていた。でも、なんだか今話しておきたいと思って語りかける。
「きっとあなたのおかげね。私がこんなに早く立ち直れたのも…私、ノエルがいてくれてよかったって本当に思うわ…ありがとう」
いつもだったら、こんなに素直に話せないけれど、彼が聞いてないとわかっているからこそ本当の気持ちが言葉になって出てきた。
いつも、大変そうだしもう少し寝かせてあげましょう。
私はノエルのサラサラな髪を少し撫で、自分の部屋を後にする。
「ノエル、おやすみ」
部屋を出る際に、小さく声をかけた。
パタン
と、扉が閉まったあと、
「…ハァ…なんだよ、あれ。反則でしょ。起きるタイミング逃したし」
エレノアの気配を察し、途中から起きていたノエルが小さくため息を溢したことを私は知る由もなかったのだった。