元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
「…エレノアは本当に優しいね。そこは、君のいいところだと僕も思うよ。けどね、世の中、エレノアみたいに優しい人ばかりじゃないってこと、それだけは覚えておいて」
ノエルは、真剣な表情で私を見つめると。諭すような口調で語りかけてくる。
「…う、うん。気をつける」
有無を言わさないといった彼の圧に思わず、コクコクと、私は素直に頷いていた。
「…じゃあ、僕はそろそろ行こうかな。会議の準備もあるし…」
チラリと、壁にかかった時計に目をやると、ノエルはサッと席を立つ。
「エレノア、またゆっくり一緒に食事をしよう。その時までには……君にも僕がまだ言えていないことも…話せると思うから」
「…わかった。ノエルもあんまり無理しないで。ちゃんと疲れている時は休んでね」
私の声かけに、ノエルは、驚いたように目を丸くする。しかし、次の瞬間には、小さく笑みを浮かべ、
「ありがとう。またね。エレノア」
それだけ言い残し、部屋を出ていった。