元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
あぁ…あれね。
私は心の中で苦笑いを浮かべつつ、
「恥ずかしい話まさか、ノエルがあんな風に想っていてくれてたなんて気づかなくて…でも、今回の件でとても気持ちも伝わってきたし、嬉しかったわ」
と、表向きの答え方で話を合わせる。
「…そ、そうですよね…ノエル様とお嬢様お似合いですし…」
…アリス?
大抵今のように答えれば、周りも嬉しそうな笑みを浮かべるのに彼女は少し青ざめてみえた。
それは、まるで何かに怯えているようで…。
「…アリス、大丈夫?少し顔色が優れないみたいだけれど…」
思わず心配になり、声をかけるが
「え?そうですか!?そんなことないですよ、というか、お話してたらもう部屋の前ですね。さぁ、お嬢様、お入りくださいませ」
ちょうど部屋の前に着いたこともあり、アリスはゆっくりドアを開け、私に入るように促す。
「えぇ。ありがとう」
「それではまた何かご用があればお呼びくださいませ、失礼致します」
私が部屋に入ったのを確認し、アリスは深々お辞儀をすると足早に部屋を去っていった。