元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています

ポッと、心に広がる暖かな感覚。

使用人たちの賢明な判断と優れた行動力のおかげで私は今こうして無事に立っているのだ。

「…皆、ありがとう。あなた達のおかげで私も無事よ、こちらが指示を出す前に素早く行動してくれて本当に感謝してるわ」

近くにいるルーナをはじめとする使用人に向き直り、深々と頭を下げ感謝の意を述べる。

「お嬢様、そんな…」

「…勿体ないお言葉ですわ」

「こちらもお嬢様がご無事で本当によかったです。ご主人様が不在の時にお嬢様をお守りするのは私たち使用人の務めでございます」

それぞれ、側に控えているメイドや執事たちもホッとしたような嬉しそうな表情で口々に話し出す。

そんな中、1人浮かない表情をしているのは、

「…アリス」

ビクッ

肩を震わせ、縮こまっている彼女だけ。

私に名前を呼ばれ、怯えたように下を向いている。

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