元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
「えぇ。どうぞ」
ぬいぐるみを抱きしめたまま、身体だけ起こしたのと同時にノエルが部屋に入ってきた。
…あら?何で私こんなに安心しているのかしら。
その姿を見た瞬間、なぜだかホッとする自分がいるのだ。
「…隣いいか?」
と、紳士的に尋ねてくるノエル。
おそらく、先程のリアムとのやり取りで気を遣ってくれているのだろう。
男の自分が隣に来ても大丈夫かと。
「…えぇ。大丈夫、どうぞ」
そんな彼の優しい気遣いが素直に嬉しかった。
私の承諾を得て、ソファに腰をおろしたノエルに対し、今度は少しだけ緊張を感じる。
ちょ、ちょっと待って。ノエルが隣の席に座るなんてよくあることなのに。
今まで感じてこなかった気持ちの変化に戸惑う私。
「エレノア…」
「な、なに?」
唐突に名前を呼ばれ、少し声が裏返った。