元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
「…本当にこれっぽっちも、気づいてないんだね…僕、これでも一応多少のアピールしてきたつもりなんだけど…流石にもうちょっと意識してもらわないと困るな」
ハァ…と、深いため息をこぼし、うつむくノエルは落ち込んでいるようにも見えた。
…え、私なんかまずいことしちゃったかしら??
「…えっと、よくわかんないけど、私が悪い…のよね?何に対しての話なのかちゃんと教えてもらえれば……っ!」
下を向くノエルを心配した私は、そう言いつつ彼に近づいた。
その時、タイミングよく、ノエルも顔をあげるものだから、至近距離で視線がからみあう。
慣れない距離感に思わず、私は反射的に後ろに下がろうとしたのだが、それは彼の手によって阻まれてしまった。
優しく私の肩を掴み、自分の方に引き寄せるから、また、抱きしめられるのかと考えた時、
…チュッ
微かなリップ音と、自分の唇に感じた感触にカチンと、身体が固まった。
…キスされた…。