元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
「あの後も時々ここには来ていたんだ、再会できて嬉しいよ」
「…私も嬉しいです」
今更、私がエレノアだったなんて言えるはずもなく、とりあえず話を合せることにする。
「君には色々話を聞いてもらったから報告したかったんだ、前言ってた女友達とは仲直りできたんだよ」
「…!!そうでしたの…それなら、よかったです」
以前、ノエルと会った時、私(エレノア)との手紙のやり取りについて悩み、ノアに話をしていたことを思い出す。
「ノア…時間ある?よければ少し話がしたいんだけど」
「あ、あの…私、実は待ち合わせというか、人を待ってて…」
ちらりと、店内に視線をうつし、人を待っていることを安易に伝えてみる。
そう、そろそろ席の空きを確認しているルーナがもどってきてしまう可能性が非常に高い。
二人が鉢合わせしてしまったら…ノアがエレノアであるとバレてしまう。それだけはなんとしても避けたかった。
「そうか…残念だな。せっかく会えたのに」
…うっ。そんな顔しないでよ〜。
一瞬、寂しそうな表情を浮かべる彼に、誘いを断ったことへの罪悪感が芽生えた。