元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
「エレノアおめでとう。今日は君の16歳の誕生日だ。そんな素敵な日を祝えて私は嬉しいよ」
そう言って私の手の甲に優雅にキスをする青年は、3歳年上の婚約者リアム・コックス。コックス公爵家の長男だ。
「リアム様、ありがとうございます。」
そして私、エレノア・ビクターは、ビクター伯爵家の1人娘。
リアムのエスコートを受け、楽しげにフロアでダンスを踊っていたのはたった数十分前のことなのに、今の私には遠い過去の出来事のように感じていた。
小さい頃から決められた結婚。貴族社会では珍しくもない。
私の母もその母だって幼少の頃から決められた相手がいたのだ。
恋愛結婚なんて難しいのは百も承知。でも、私はとても幸せだった。だって、優しくて素敵なリアムが大好きだったから。
なのに…、こんなのってあんまりだと思う。
よりによってリアムの浮気相手が妹のように可愛がってきた従姉妹のシャーロット・テイラーだなんて。
私はグッと唇を噛み締める。そうしないと涙が溢れてしまいそうだった。
シャーロットは、私の母の弟の子どもで私より2歳下の14歳。テイラー子爵家の1人娘だ。
お互い1人っ子だったこともあり、本当の姉妹みたいに育ってきた。