元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています


「…ノ、じゃなかった…すみません、私も連れがいましてもうすぐ来る予定なので…」

思わずノエルと、名前を呼びそうになり思い出した。

私、今変装してるんだったわ。

ノエルだって私の名前を呼んで座ったわけではないし、たぶんエレノアだと気づいていないんだろう。


「…連れですか。それではそちらのお連れ様がいらっしゃるまで話し相手になって頂けませんか、レディ」


「…構いませんけど」


本当はめちゃくちゃ構うけど。
面白そうだし、ま、いっか。

と言う本音を心の中にしまい、今できる最上級の笑みを浮かべる。


それにしてもノエル…私の前に現れないと思ったらこんなところで油売ってるなんて。


1年ぶりに見る彼は、卒業式の時よりも少し背が伸びていて大人びて見えた。


「失礼ですがお名前を伺っても?」

「え、あ…ノア。私ノアと申します」

咄嗟に出てきたのは家族だけが使う私の愛称。

ノエルも私がノアと呼ばれているのは知らないだろうし、まぁ、バレないだろう。


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