元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
…お姉様が私を庇って…。
チクンと、小さく胸が痛むのを感じた。
廊下からは未だに私とエレノアお姉様の話で盛り上がる侍女たちの声が響いている。
「でも、結局のところ、シャーロット様は、何でエレノア様を誘拐なんかしたのかしらね?」
「あぁ!そんなの決まってるわ。エレノア様って才色兼備だし、性格だって非の打ち所がないでしょ?シャーロットお嬢様も見た目はお綺麗だけれど、まぁそれだけじゃない?身近にあんな完璧な従姉妹がいたんじゃ、シャーロットお嬢様じゃなくても、嫉妬するわよ〜」
ケラケラと、楽しそうにそんな話をする侍女達。
…何も知らないくせに、適当なことを…!
やり方は間違っていたかもしれないけれど、私は私なりに、お姉様に幸せになってもらいたかっただけ。
思わず部屋の中にあった本を手に取り、乱暴にベッドに投げつけた。
そこまで大きな音はしなかったが、部屋の前で喋っていた侍女たちには聞こえたらしい。
バタバタと、慌てたように私の部屋の前から立ち去る足音が聞こえる。