元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
――――…
今日は、朝起きた時からなんだか嫌な予感はしていた。
その予感は、兄が僕の部屋を尋ねてきたことで確信へと変わる。
「兄さん…何か用?」
「ノエル。実は今日、折り入ってお前に頼みがあるんだ…」
兄であるリアムが、チラチラと時計を気にしながら僕にそう声をかけてきた。
時計を気にしてるってことは…また、どこかのご令嬢とでもデートの約束か?
来るもの拒まず、去るもの追わずそんな兄の恋愛スタイルにも困ったものである。
「……で?頼みって何?」
「実はな…エレノアとの約束をすっかり忘れて今日、他のご令嬢とお茶をする約束をしてしまってね…」
「…じゃあご令嬢との約束断わんなよ。エレノアは兄さんの婚約者なんだから」
呆れたように、目の前の兄を見つめ、冷たくそう言い放った。