元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
「…嘘だ。アリスは、嘘つく時はいつも視線合わせないんだよな。本当にわかりやすいヤツ」
ツカツカと、近づいてきたトムは、私の隣に腰掛けた。
「……」
「…で、何があったんだよ?」
と、黙り込む私に再度尋ねてくる。
その声が思ったより優しかったからだろうか。
「…っ、ぐすっ」
思わず瞳からポロッと、我慢していた涙が溢れた。
そして、私は少しずつ、先日のビクター伯爵家で起こった事件について語り始めたのだった。
――――…