元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています


――――…


「ふーん、そんなことがあったのか…」


トムは、少し考え込むように腕を組む。


「…私が馬鹿だった。全部、悪いのは私なの。それなのに…お嬢様もルーナさんも他の方たちも優しくしてくれて…」


グスっと、鼻を啜り私は近くにあったクッションを抱きしめた。


「…それで、アリスはビクター伯爵家辞めたいの?」


「…バカ、辞めたいわけないじゃない!!」


「じゃあ、もう答えは出てるじゃん。一生懸命続けなよ、雇い主のお嬢様もアリスが仕事を続けること望んでんだろう?……過去には戻れないんだから、やっちゃったことをクヨクヨするより、もっと前を向いたほうがいいじゃん?」


私の背中を優しく撫でながらそう言うトムに、私は目を丸くする。


「…そうね、ほんと。トムの言うとおりだわ」

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