元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
ルーナがハッとしたように声を荒げた。
「…確かに。今日は、お忍びで買い物に来てるから、あなたとマーク以外は私が家にいると思ってるかもしれないわね。特に誰にも声かけて来なかったし」
ちなみにマークというのは、今私達が乗っている馬車を運転している御者の名前だ。
「大変!早く帰らないとですよ!ノエル様がついてエレノアお嬢様がいないなんてことがわかったら騒ぎになります。マークさんちょっと早めにお願いします」
窓を開けてルーナがマークに声をかける。
彼女に促されたからか、幾分か馬車の速度があがった。
「それに、その格好では駄目ですわ。家に帰ったらとりあえずお着替えをしなくては。その前にお風呂ですわね!汗もかいたでしょうし」
「ノエルに会うだけだからそんな奇抜…じゃなかったお洒落な格好じゃなくていいからね。なるべくシンプルにお願いね…」
気合を入れるルーナを横目に私はポツリと呟いた。