元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
その時。
バンッ
部屋の入口の扉がノックもなしに開かれ、私とルーナは顔を見合わせる。
な、何事かしら?
すると、
「エレノア!大変だ。早く準備をして応接間に来なさい」
慌てたように…いや、怒っているのだろうか表情が固いお父様がそう言いながら私の部屋に入ってきた。
「何事ですか、お父様…ノックもせずに。びっくりしました」
「あ、あぁ…それは悪かった」
「それで急に応接間に来なさいとは…誰か大切なお客様でもいらしたの?」
努めて冷静に私は父の顔を見ながら問いかける。
「…はぁ…。全く大事な客とはよく言ったものだよ…コックス家勢揃いでやって来ているんだ。リアムの件もあるし、最初は追い返そうと思ったが…エレノアはノエルとは仲が良かったのを思い出してな…無下に追い返すのもどうかと思って」
私の部屋のソファに腰を下ろし、頭を抱えるお父様。
「…コックス家勢揃いなんて穏やかではありませんわね。わかりました、すぐに準備致しますからお父様そう気を落とさないでください」