元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
「…準備ができたら来なさい。待っているから」
最後に小さく微笑んでお父様は私の部屋を出て行った。
そんなお父様を見送った後にルーナは、
「今日の旦那様、格好いいですね」
ふふっと、楽しそうに微笑む。
「…えぇ。本当に、私には勿体ないくらい素敵なお父様だわ」
そんな彼女の言葉に素直に同意し、私は改めてスッと背筋を伸ばした。
カツン、カツン…。
廊下を歩く私のヒールの音が響き渡る。
自分の部屋を後にして、応接間へと続く階段を上っていく。
そして、
ピタッ
応接間の扉の前で私は立ち止まった。
「お嬢様…準備はよろしいでしょうか?」
私の半歩後ろを歩いていたルーナが応接間の扉を開けるため、私の前にやって来て扉に手をかける。
「えぇ。開けてちょうだい」
「…かしこまりました」
小さくそう呟いて、私の言葉とほぼ同時にルーナは、応接間の扉をゆっくりと開いたのだった。