元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています


「じゃあ、少しでも悪いと思ってくれるなら、僕の婚約者になってほしいな」


浮かない顔の私に向かって小さく微笑んだノエルはまたしてもそんなことを言う。


「…ノエルが跡取り問題に巻き込まれて大変なのはわかったけどだからって私と婚約したいだなんて…」


「僕もね、こっちに戻ってきた途端、父さん、母さんからは見合い写真を何枚も見せられるわ、兄さんからの視線は痛いわで大変なんだよ。それに僕だってまだ全然結婚する気ないしね。だからこそエレノアに協力してほしいんだ」


「…協力ってどういうこと?」


「エレノアには僕の期限付きの婚約者になってほしいんだよ」


期限付き…?


ノエルの言葉に私は首を傾げる。


「僕はすぐにでも誰かと婚約しないといけない状況だけど、正直まだ結婚する気はない。そこで友達の君に期限付きの婚約者になってほしいってわけ」


そこまで聞いてようやくピンときた。


「なるほど。つまり、私を隠れ蓑にしたいってわけね?」


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