元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
さぁさぁと、ルーナに促され、私は重い足取りで玄関の扉をくぐる。
すると、
屋敷の前に停まっていた立派な馬車の近くで
黒のスーツに身をつつんだノエルが立っていた。
ノエルって…本当に何でも似合うのね
黒のスーツのせいかなんだかいつもより大人びて見える。
「…エレノア、遅かったね。待ちくたびれ…」
玄関から出てきた私に気づき、声をかけるノエルは、私の姿を見て口を閉ざした。
…え、や、やっぱり似合ってなかったかしら
何も話さなくなってしまった彼に対し、そんな不安が頭をよぎる。
しかし、次の瞬間、
「…え」
「これ、羽織ってて…」
ツカツカと、足早に私の方に歩み寄ってきたノエルは、私に自身が着てたスーツのジャケットを羽織らせた。