元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
突然の出来事にポカンとしている私をよそに、
「あ!ノエル様、それじゃせっかくのお嬢様のセクシーな背中が見えないじゃないですか」
「……さ、エレノア行くよ」
「無視しないでくださいよ!もう、ご自分で選ばれたドレスのくせに…」
怒るルーナと、我関せずといった態度で私をエスコートしようとするノエル。
「…ノ、ノエル?似合ってなかったのなら私すぐに着替えて…」
「いや、そんなことない。似合ってるよ。ただ、ちょっと寒そうだと思っただけだから。会場につくまで羽織ってて?」
と、いつもの笑顔でノエルは言い切った。
「あ、ありがとう。じゃあそうするわ」
何だ、寒そうに見えただけかと、ホッと胸を撫で下ろした私は、ノエルのエスコートを受けて馬車に乗り込んだ。
その時、
「…ったく…それは反則」
と、彼が呟いた声は馬車の扉を閉める音と重なり私には聞こえなかったのだった。