元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
「……」
私のそんな様子を見て、バスティーユ公爵も口を閉ざした。
その時。
「エレノア!待ってくれ、まだ話は…」
屋敷の扉が勢いよく開き、焦ったような表情を浮かべたリアムが入ってくる。
「…リアム様」
彼の登場にその場の空気が凍りついた。
あらあら、またなんてタイミングで…。
と、思ったのも束の間、
バシッ
鈍い音が響く。
「…リアム・コックス。話は全てエレノア嬢から聞いたぞ…お前はなんて恥知らずなことを」
バスティーユ公爵は、息子のリアムの頬を殴りつけたのだ。
「…と、父さん」
信じられないといった表情で父親を見つめるリアム。
そんな打ちひしがれる彼に追い打ちをかけるように
「コックス公爵、今回のエレノアとの婚約はなかったことにしてもらう」
私の父、ビクター伯爵からも冷たい言葉を浴びせられる。