私たちの消えた青春
高校一年生
入学式
高梨悠奈は新しい制服、綺麗なローファー、一目惚れしたリュックを用意して今日の入学式を楽しみにしていた。中学まではセーラー服だった事もありブレザーの制服に憧れていたし、何しろ今年から新制服だというところも嬉しさの表れであろう。
しかし、悠奈には不安なことが一つだけある。それは人見知りがある事。こればかりは、直したくても直せない。中学校は隣の小学校と私の小学校の2校が集合する形だったため小学校からの友人がいた。だからなんとかなっていた。
だが、高校は違う。市内ではなく、市外の高校。その上進学校というのもあり、同じ中学校の子はほんの数人、その中でも話せるのは従兄妹だけ…。友達の少なさは言わなくてもわかるだろう。なんたって従兄妹が同じ高校で良かったと心の底から思うほどだ。
高校では新しい友達できるかな…。なんて考えていたら呼び鈴が鳴った。『あ、来た…』
「はーい今行くー!」
扉を開けるとコンタクトデビューを果たした従兄妹の一ノ瀬涼が立っていた。
「おはよう、悠奈。制服似合ってるね。」
「おはよう。ありがとう。涼も似合ってるよ。コンタクト怖くなかったの??」
「最初は怖いけど案外大丈夫だよ。悠奈こそ新しい友達作れるの??」
「すでに不安だからこれ以上の不安を煽らないで!」
なんて話しながら駅に向かった。
私たちが通う藤ケ丘高校は進学校ではあるが私たちの住んでいる町からだと少し距離があるため、この町からの進学者はそう多くない。
他にも勉強だけではなく、スポーツも有名で、サッカー、バスケ、バレーをはじめ数多くの運動部が地方大会は勿論全国大会出場者が多く在籍する。まぁ、ダンスぐらいしかしたことのない私には縁のないものだ。
学校に着くと、早速クラスの確認だ。
『神様、どうか…どうか…!涼と同じクラスにしてください!』
そう願いながら掲示を見ると、5組の欄に私と涼の名前が書かれてあった。
「よかった…。」と小さく一言。
教室で入学式の段取りについて聞き終わり、時間まで待っていると、前の席の子が私に話しかけてきた。
「ねぇねぇ!私、香坂南中の高瀬陽奈っていうんだけど、あなたの名前は??」
「高梨悠奈…四谷中学からです。」
「へぇ、四谷からだと結構遠いね!ていうか、なんで敬語?タメなんだから敬語はNGだよ~」
「わ、わかった…。」
「あ!先生きた!」
…。
突然のことに頭が混乱しているのは、仕方ない。
なんたって今まで、こんなにもコミュニケーション能力の高い人に話しかけられた事もなければ、会話をする事すらなかったからだ。
すごい子だなぁと思っていたら先生が来た。
会場に移動しろのとことだ。
常人ならばこの程度のことで混乱しないだろう。だが、人見知りには無理難題である。
そんなことをことを考えていたら、気づいた時には入学式が終わっていた。
高校生になって特に何か大きな変化がある訳でもなく、少し実感が湧いて終了した。