好きな人に振り向いて欲しいだけ
彼は、モテる人だ。
ルックスも良いし、誰とでも打ち解けられるし、普段から「俺モテるからな」と自分で言ったりしている。
もちろん冗談なのは分かっているけれど、他の女の子と仲良さそうに話しているのを見ると、どうしても嫉妬してしまう。
現に、こうして彼が他の女の子に笑顔を向けている姿を目の当たりにすると、心がざわつく。
腹の底から黒いモヤモヤが湧き起こってくるような感覚。
あぁ、嫌だ。こんな感情になってしまう自分。
彼氏の翔流は、男女問わず人気で誰とでも仲が良い。
だから私にも優しく接してくれるし、そんな彼だからこそ好きになったのだけれど、段々と独占欲が強くなっていく。
なんで私の前で、わざわざ他の女の子と喋るの?
彼の神経が理解できなかった。
……いや、本当は分かっている。
単純に可愛い女の子が好きだから。
ただ、それだけだ。
見ていれば分かる。
理由なんてシンプルで、彼は本能に従って生きているだけ。
やめて欲しいと言ったところで、必要以上に彼の交友関係にまで口出しする筋合いもなければ、翔流の自由を奪う権利もない。
それに例え私の前だけ女の子と関わらないようにしていても、きっと見えないところで浮気するだろう。
男とは、そういう生き物だ。
モテる人が彼氏というのは、こういうところがツラい。
私の方だけ、向いてくれる人だったらいいのに。
私だって、彼がいなくたって生きていける。
そう思いたかった。
翔流が他の女の子と話している傍ら、私も同じようにあてつけるように彼の前でわざと別の男の人と親しげに話を交わした。
これでちょっとは私のことも気に掛けてくれたら良いのに。なんて、期待を込めながら。
< 1 / 2 >