求める眼差し ~鏡越しに見つめあう、彼と私の物語~

カルテ side黒川

 アシスタントの野村は、うちの店の女性スタッフにも受けがいい。
 見た目以上に、ちゃんと気を遣えるヤツなのもあるし、簡単には身内に手を出さない、というのもある。
 うまくバランスとっていると思ってはいる。

 しかし。逆に、簡単にお客に手を出すのが、玉に瑕。
 まぁ、お客も何かを期待してる場合もあるから、そこは、お互い様なんだろうけど。
 ちょっとしたイタズラ程度ならいいが。


 ――俺のオモチャにちょっかい出したら、ダメでしょ。


 早瀬の髪を切りながら、鏡越しに野村に目を向けると、ペロリと舌を出して見せた。
 わかっててやってるから、始末が悪い。
 俺が睨んだら、慌ててどこかに隠れやがった。

 ……まぁ、鏡に映った早瀬の赤く染まった頬は、魅惑的ではあったけど。
 俺以外に、そんな顔は見せてほしくないなぁ。
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