求める眼差し ~鏡越しに見つめあう、彼と私の物語~
第二話

予約

 世の中のクリスマスモードには、嫌気がさしてくる。独り者には、とことん嫌味な季節だ。

 店内には、カップルでのお客様も増え、キラキラ眩しい。
 自分が物欲しそうな顔をしていそうで、思わず両頬をたたき、気合いを入れなおす。
 レジ脇の今月のシフトのスケジュールに目をやる。

 ――みんな、クリスマス返上だなぁ。

 そういう私も、クリスマスの前後はびっしりシフトが入っている。
 まぁ、もともと予定もないし。それに合わせる相手もいないし。
 ふと、黒川さんのことを思い出した。

 ――黒川さんは、彼女さんとかとデートかな。

 黒川さんに彼女がいるかなんて知らない。さすがに、そこまで聞く勇気はない。
 年齢的にいえば、結婚しててもいい年齢ではあるが、左の薬指に指輪がないのは確認済み。
 でも、仕事中ははずしたりするのかもしれないし。
 黒川さんのことを考えだしたら、仕事に集中できなくなってきた。

「早瀬さん、お客様!」
「あ、はい! いらっしゃいませ~」

 店長の声で作り笑いをはりつけて、接客モードで、レジに入る。
 目の前の二人の男女は、仲良く商品を持ってきた。高校生くらいだろうか。
 ここはいわゆる観光地で、取り扱っている商品も、その観光地に合わせて、お土産によさそうなモノが置かれている。外国人客もいるので、和雑貨なんかも取り扱っていたりする。
 百貨店系列の運営だけれど、店舗の運営はまた別。私がいるのも、いくつかの店舗のうちの一つ。
 お揃いのキャラクターモノのストラップ。かわいいなぁ、と思いながらレジを打つ。

「ありがとうございました~」

 二人が親しげに話している後ろ姿を見て、羨ましいと思う自分がいる。


 ――黒川さんに会いに行こうか。


 美容室に行って、そろそろ一か月たつし。
 明日ならオフだし。
 予約しようかな。
 休憩時間にでも電話してみようか。


 立て続けにお客様がきたせいで、なかなか交代できず、午後二時近くにようやくお昼休憩に入ることができた。
 時間帯のせいか、休憩室は人もまばら。
 スマホで美容室のホームページを探して、スタッフのお休みをチェック。
 明日は黒川は休みじゃない。よし、電話しよう。

 休憩室から出て、人気のない非常階段で予約の電話をかける。

「予約お願いしたいんですが」

 明日は少し予約が立て込んでいて、夕方まで難しいとのこと。
 かといって、明日をはずすと、しばらくは私も仕事が入っててなかなか行けそうもない。
 仕方がないので、午後五時に予約を入れた。
 それまでに、いろいろと部屋の片づけをして、久しぶりにマッサージに行こうか、と明日のスケジュールを考える私なのであった。
< 7 / 26 >

この作品をシェア

pagetop