君の胃袋を掴む
パタンとゆっくり扉が閉まると同時に、綺麗なワンピースを着た女性がエレベーターの角を曲がるところだった。
大学の人か、それともどっかのクラブで出会った人か。
雅宗の交友関係って広くて浅くて胡散臭い。
その割に、信用を求めている。
「あ、小梅ちゃん」
ガチャ、と扉が開いてこちらを覗く顔。
自分のことを棚に上げていた。
私だって、その広くて浅くて胡散臭い人間関係の中の一人だ。
「朝からよくあんな人を怒らせられる」
「本当だよね、僕低血圧なのにさ」
「君は反省をした方が……え」
壁から身体を離して内側のドアノブを掴むと、ぬるりとした感触。