君の胃袋を掴む

パタンとゆっくり扉が閉まると同時に、綺麗なワンピースを着た女性がエレベーターの角を曲がるところだった。

大学の人か、それともどっかのクラブで出会った人か。
雅宗の交友関係って広くて浅くて胡散臭い。

その割に、信用を求めている。

「あ、小梅ちゃん」

ガチャ、と扉が開いてこちらを覗く顔。

自分のことを棚に上げていた。
私だって、その広くて浅くて胡散臭い人間関係の中の一人だ。

「朝からよくあんな人を怒らせられる」
「本当だよね、僕低血圧なのにさ」
「君は反省をした方が……え」

壁から身体を離して内側のドアノブを掴むと、ぬるりとした感触。

< 11 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop