君の胃袋を掴む
雅宗が寝室から出てきて、血のついたそれを手にしていた。
「小梅ちゃんがちゃんと研いでくれてるからスパッと切れた」
切れ味を人間で試すな。じゃない。
「私、もう果物切らない……」
「え、なんで!」
「それで切りたくない」
「さっき桃入れてなかった!?」
「頑張って囓りなよ。それか新しいの買ってきて」
殆ど空の野菜室に野菜を放り込んでいく。
というか、包丁の場所が知っていたということは、あの人もこのキッチンに立ったことがある、ということか。
その想像に心の中でモヤっとしたものが広がる。