君の胃袋を掴む
ここのキッチンに対する所有欲。
えー、と雅宗が包丁についた血をタオルで拭う。腕の血は止まったらしい。
「じゃあ買ってくる。今日の昼飯なに?」
「照り焼き丼」
「やったー。行ってきまーす」
「今から行くの?」
「だって今日桃食べたいし」
ソファーに放ってあった服を着て、雅宗は財布と鍵だけ持って玄関の方へ行く。
「……さっきのひと来ないよね?」
「誰?」
「君を刺した」
「来ても鍵持ってないし、入れないよ」
そうか、それなら安心……とはならない。
私が持っている鍵のことでも、モヤっと何かが広がる。