君の胃袋を掴む

顔を明るくさせて、椅子をこちらに寄せて座った。どんな早業。

準備万端な雅宗を前に、今更お預けすることもできず、私は鞄からタッパーを出す。蓋を開くと確かにバターと甘い匂いがした。
並んだ三つのカップケーキ。

「どうぞ」
「いただきます」

顔も身長も成績もまあまあ良いし、人懐こいところも悪くはない。
しかし、さっきまで修羅場だったのに、今普通にクラスメートの作ったお菓子を食べてるところとか、なんか軽い。

ぱく、と一口大きく囓られたカップケーキ。

なんとなく私も座って、その様子を眺めた。

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