君の胃袋を掴む
日の暮れた教室内は暗く、窓の外の灯りが差し込むほど。
突然ぱっと明るくなった教室。入口から女子が入ってきて、僕の横を通った。
ふわりと香る甘い匂い。
「小梅ちゃん」
僕のいる後ろの机からプリントを出している。
そこから上げた視線と絡む。
「なに?」
「なんか甘い匂いする」
「部活でカップケーキ作ったから?」
そこで初めて小梅ちゃんの作ったものを食べた。
言葉にならないくらい美味しかった。
本当、なにか危ない薬が入ってるのかと疑うほどには。
「離婚した母親の方が料理研究家でレシピ集とか出してるの。私は父親の方について行ったんだけど、再婚相手のひとの料理がまずくて」