大和の風を感じて2〜花の舞姫〜【大和3部作シリーズ第2弾】
【たかみのさと】と呼ばれる小高い丘は、本当に直ぐ近くにあるみたいだ。
そこに忍坂姫達は使用人の女性2人と、従者の男2人を連れて徒歩で向かう事にした。
(今日は天気も良いし、とてもぽかぽかしていて気持ちが良いわ)
忍坂姫はその場で大きく腕を伸ばして、背伸びをした。
こんな日は、むしろ皇子達とも一緒に来てみたかったなと思ったぐらいだ。
佐由良は阿佐津姫と手を繋いで歩いていた。彼女も宮の外に出られたので、とても機嫌が良さそうだ。
「ここら辺は、夫が大王に即位してから来たので、住み始めて意外と日は浅いのよね。でもとても良い所だと思ったわ」
佐由良はそう答えた。ここに来る以前は、亡き父である大雀大王の宮から南に下った所に若宮を建てて、そこで暮らしていたそうだ。
「確かにのどかでとても気持ちの良い所ですね。それに今日大王達が視察に行った場所もここから割りと近いと聞いていますし、大王からした倭国の政り事だけでなく、他国との交流においても利便性がありそうですね」
忍坂姫が佐由良達とそんな話しをしている時だった。
彼女達から少し離れた所で、自分達を見ている人間がいた。
「あの娘、見たことがあるぞ。6年前に今の大王の元にいた吉備の娘だ。それで今は大王の妃になっている」
そんな彼女達を見ていたのは嵯多彦だった。先程いた場所から離れて、瑞歯別大王の住んでいる丹比柴籬宮付近に来ていたのだ。
そんな彼と一緒に、大炯を含めた3人の同行者がついていた。
幸い、彼女らは彼らの存在には気付いてはいないようだ。
「嵯多彦、どうかしたか?」
隣にいる大炯が彼に声を掛けた。
「おい、大炯あれを見ろ。あそこを歩いてる奴の中に、女の子を連れて歩いている女がいるだろう。あの女が大王の妃だ」
嵯多彦はそう彼に説明した。彼女に会ったのは過去1回だけだが、当時と変わらず、相変わらず綺麗な容姿をした娘だと思った。
「あれが、この国の王の妃か。少しここから離れてはいるが、容姿ははっきりと見える。何とも綺麗な娘のようだな」
大炯も一緒に佐由良達を見た。どうやらどこかに向かっているみたいで、あの小さな女の子は恐らく彼女の娘だろう。
そして嵯多彦は、そんな佐由良達を見てふと思い付いた。
「今は大王も側におらず、従者も数名。であればあの妃を拐いやすいな。そうすれば大王もかなり慌てるだろうよ」
嵯多彦は思わずその場で笑いだした。大事な妃がいなくなったとすれば、あの男はどんな顔をするのだろうか。
きっとかなり動揺して、政り事どころではなくなるはずだ。
そこに忍坂姫達は使用人の女性2人と、従者の男2人を連れて徒歩で向かう事にした。
(今日は天気も良いし、とてもぽかぽかしていて気持ちが良いわ)
忍坂姫はその場で大きく腕を伸ばして、背伸びをした。
こんな日は、むしろ皇子達とも一緒に来てみたかったなと思ったぐらいだ。
佐由良は阿佐津姫と手を繋いで歩いていた。彼女も宮の外に出られたので、とても機嫌が良さそうだ。
「ここら辺は、夫が大王に即位してから来たので、住み始めて意外と日は浅いのよね。でもとても良い所だと思ったわ」
佐由良はそう答えた。ここに来る以前は、亡き父である大雀大王の宮から南に下った所に若宮を建てて、そこで暮らしていたそうだ。
「確かにのどかでとても気持ちの良い所ですね。それに今日大王達が視察に行った場所もここから割りと近いと聞いていますし、大王からした倭国の政り事だけでなく、他国との交流においても利便性がありそうですね」
忍坂姫が佐由良達とそんな話しをしている時だった。
彼女達から少し離れた所で、自分達を見ている人間がいた。
「あの娘、見たことがあるぞ。6年前に今の大王の元にいた吉備の娘だ。それで今は大王の妃になっている」
そんな彼女達を見ていたのは嵯多彦だった。先程いた場所から離れて、瑞歯別大王の住んでいる丹比柴籬宮付近に来ていたのだ。
そんな彼と一緒に、大炯を含めた3人の同行者がついていた。
幸い、彼女らは彼らの存在には気付いてはいないようだ。
「嵯多彦、どうかしたか?」
隣にいる大炯が彼に声を掛けた。
「おい、大炯あれを見ろ。あそこを歩いてる奴の中に、女の子を連れて歩いている女がいるだろう。あの女が大王の妃だ」
嵯多彦はそう彼に説明した。彼女に会ったのは過去1回だけだが、当時と変わらず、相変わらず綺麗な容姿をした娘だと思った。
「あれが、この国の王の妃か。少しここから離れてはいるが、容姿ははっきりと見える。何とも綺麗な娘のようだな」
大炯も一緒に佐由良達を見た。どうやらどこかに向かっているみたいで、あの小さな女の子は恐らく彼女の娘だろう。
そして嵯多彦は、そんな佐由良達を見てふと思い付いた。
「今は大王も側におらず、従者も数名。であればあの妃を拐いやすいな。そうすれば大王もかなり慌てるだろうよ」
嵯多彦は思わずその場で笑いだした。大事な妃がいなくなったとすれば、あの男はどんな顔をするのだろうか。
きっとかなり動揺して、政り事どころではなくなるはずだ。