月下の少女
「じゃあ、今度は教えてやる。でもその前に1つ。
俺は、春陽の事が好きだ。」
………好き…?
今、瑞希さん、私の事好きって言った?
「春陽は、俺のことどう思う?」
「それは…ッ!」
またあの時と同じように顔が赤くなり頭の中が瑞希さんでいっぱいになる。
「それは…?」
瑞希さんが私に答えを求めるように顔を近づけてくる。
少しでも動いたら顔が触れちゃうくらいの距離。
心臓がドキドキして落ち着かない。
これって何…?
もしかして…好き…ってこと…?
夜しか動けない私に出会いなんてなかったし、初恋もしたことない。
でも、これが恋…なのかな…?
そう思うと、ぐちゃぐちゃだった感情が綺麗に整理されたような気がして、妙に腑に落ちた。
「好きって…言ったら困る…?」
この距離じゃないと聞こえないくらい小さな声で私は答えた。
病気持ちの私が人を好きになる。
それがどんなに難しいことか…。
でも、瑞希さんだから本心を伝えたかった。
「フッ…。困るなら最初から聞かねぇよ。感情の正体、わかったか?」
「…うん…。」
好きって感情がモヤモヤした気持ちの正体。
瑞希さんとの距離は相変わらず近すぎて恥ずかしい。
でも、嫌ではない。
ギュッ
いつの間にか瑞希さんの手が私の体を包み、体が完全に密着した。