月下の少女
時刻は夕方の6時半
もう日が傾いておりあと1時間もすれば完全に日が沈む。
そうすれば私の活動時間だ。
私はonyxに続く階段を登りながらパーカーのフードを被ると、準備中のマスターの姿が見えた。
「お、今日はいつもより早いね。もう行くの?」
階段を登った先には開店準備中のマスターの姿があった。
「いえ、もう少しゆっくりしてから動きます。はみ出し者達は暗くなったら元気になりますから。その時間に。何か手伝いましょうか?」
「そっか。あまり無理はしないこと。いいね?手伝いか。昨日たくさん手伝ってもらったからな。今日はゆっくりしてていいよ?」
「どうせちゃんと日が沈むまではここにいるつもりで来ましたから何か手伝わせてください。」
「そう?じゃあ30分くらいは時間あるね。んー、冷蔵庫に材料入ってるからそれで肉じゃが作ってくれる?この前ハルちゃんが作ったやつお通しで出したら好評でさ。いいかい?」
「分かりました。あんなので良ければいつでも作りますから言ってください。」
私はエプロンをつけて慣れた手つきで冷蔵庫から材料を取り出した。
腕を捲って野菜を洗い、皮をむいて鍋で具材を炒める。
料理をしている時間は何も考えなくていいから意外と好きかもしれない。
大さじとか小さじとかそういうのは分からないからいつも通り目分量で味付けをする。
しばらく煮込むと具材が茶色く色付き始めた。
味見をすると意外と美味しくできた気がする。
というか他の肉じゃがを食べたことがないから比較のしょうがないんだけどね。
そうこうしているうちに、外は完全に日が沈み夜の世界が動き出していた。
派手な格好をした人が増え、ネオンがギラつく。
世間の常識から外れた人たちが活発になる時間。