月下の少女
「来たな。春陽はこっちだ。」
総長さん自らお出迎え。
この前の総長さんって、オフモードだったんだ。
今日はこの前より髪の毛もビシッと決まっており何より背中に「総長」と書かれた特攻服を羽織っている。
「私の案内なんて総長さんのお仕事なんですか?」
「俺が招いた客人だ。それを違う誰かになんて頼めない。」
律儀な人だな。
「それより、春陽は随分真っ黒い格好してきたな。噂通りだ。」
「黒い服しか持ってないので。可愛くなくてすみません。」
月下の少女の噂は多岐にわたる。
夜にしか現れない。
いつも黒い服に身を包んでいる。
いつもフードを被っているがその下に隠れる肌は真っ白。
華奢なのに喧嘩が最強。
まぁ、そんな感じだ
あながちどれも間違っていない。
夜の世界に生きてるから日焼けもしないし、黒い服しか着ないしね。
喧嘩を吹っ掛けてくる人達はイカつい人も多いし、その人たちと比べたら私は相当華奢だ。
噂って侮れない。
可愛げなんて誰も求めてないし、この服装が私にとっての完璧だ。
これでいい。
たまり場には多くの関東連合関係者が集まっており、時折私服を着た女の子達もいる。
その子たちはこれでもかってくらい着飾ってきていて、私とは真逆の世界にいるようだ。