月下の少女
時刻は3:35
あと1時間半
何をする訳でもなく私は一人車の中で目を閉じてじっとしていた。
どれくらい経ったのかは分からないが、しばらくして目を開けるとさっきよりも人が沢山集まっており、バイクが横一列に並んでいた。
「うわ、何が始まるの?」
車内で1人そう呟くと、倉庫の中から総長さん、幹事さん、あとこの前のパーティーに参加してた人達が次々と出てきた。
その中心にいるのが総長さんで、みんな特攻服を着ている。
正直、何かで特攻服姿を見た時はダサいなと思ったけど、実際に見てみると格別だ。
私は出てきた人達に視線を向けていると端の方に私服姿のマスターが居て思わず目を見開いた。
私は車の窓を少しだけ開けて車外の音に耳を傾けた。
「8月15日。今日は関東連合創立日だ。今日は存分に楽しめ!」
「「「「オーーーー!!!!!!!」」」」
「総長かっけぇ…」
「総長ー!!」
「キャーーーー!」
総長さんの掛け声に場にいる人達の歓声が続く。
確かに総長さんはかっこいいと思う。
女の子たちも総長さんを見て悲鳴のような歓声を上げている。
鳴り止まない声を背に総長さんとマスターの2人がこの車に向かって歩いてきた。
え、この車に2人が乗る車ってこと?
それに私が乗ってて良い訳?
一人混乱しつつ、さっき開けた窓を閉めると同時に2人が車に乗り込んできた。
運転席にマスターが、私と同じ後部座席に総長さんという感じだ。
「あの、これ、なんですか?」
「ん?あぁ、言ってなかったな。今日は関東連合の15周年なんだよ。今日が関東連合創設日。公弥さんが15年前に関東連合を作った人で、毎年参加してくれてるって訳だ。」
え?そんな大事なイベントに勝手に参加してるって大丈夫なの?
というかマスターが関東連合を作ったってことは、やっぱり相当なすごい人だった…。