月下の少女
「私は…っ!」
太陽に当たったら死ぬ病気だから…。
喉まてま出かけたその言葉は何とか飲み込んだ。
色素性乾皮症(XP)
それが私の抱えてるハンデ。
私がこの病気を抱えていることは誰も知らない。
知っているのは私を捨てた親と元々通ってた病院の先生くらい。
あとは誰にも話してない。
夜でも日焼け止めクリームを塗るのも、紫外線を通しにくい黒ばかり着て肌の露出を避けるのもその病気のせい。
だから私が自由に動けるのは日が沈んでる時間だけ。
「あと3分で海に着く。そしたらすぐ降りれる。そこまで頑張れ。」
震える手を隣から総長さんがギュッと握ってくれたが震えは治まらない。
心做しか車の速度が上がった気がする。
早く…早く…。
周りのバイクが縦一列になり次々と道路脇に停車する。
着いた?
私たちの乗る車も停車し、私は自分で車のドアの鍵を開け外に飛び出した。
「ハルちゃん?!」
さっきよりも空が青くなってきた…。
「おいどうした!?なにがあった!?」
総長さんも私の後を追って来て、動揺しているのが伺えた。
でも今は人のことを気にしている場合じゃない。
ここから走って帰るにしても間に合わない。
どこか…どこか日が当たらない場所は…?