月下の少女
私が周りをキョロキョロ見渡しているのを総長さんとマスターが心配そうに見つめている。
すると私の肩を総長さんが掴み目を合わせて来た。
「落ち着け。何があったか話してくれなきゃ分からない。」
話す?病気のこと。
でも、話したら幻滅される?
でも、この人ならどうにかしてくれる?
「大丈夫だから。な?話してみろ。」
優しく諭すような声に、少し頭が落ち着きを取り戻す。
「私は…、夜しか生きていけない体なんです…。」
「夜?」
「お願いします…。帰りたいんです。」
総長さんは数秒言葉を失っていたが、何かを決断した表情に変わった。
ちゃんと説明すらしてないし、説明する余裕もない。
でも、ただ帰りたい。
帰らなければいけない。
それだけは伝えたかった。
「公弥さん。聞こえました?」
「聞こえたよ。」
「こいつ連れて帰ってください。」
「わかった。ハルちゃん乗って!帰るよ!」
でも、公弥さんと総長さんはここに居なきゃいけない人だし、私の勝手で連れてっちゃっていいのかな?
ふとそんなことが頭をよぎったが、総長さんに背中を押されて車に押し込められた。
「公弥さんお願いします。」
「あぁ。悪いね途中で抜けて。他の奴らにもよろしく伝えておいて。」
「分かりました。では後ほど。」
そういうと私の乗った後部座席のドアを閉め、それとほぼ同時に車が動き出した。