月下の少女
「わかった。これでいい? 」

「おう。あと、春陽の事は外でなんて呼べばいい?」

さすがに見回り中“春陽”って呼ばれるのは何となくダメな気がするし、“月下の少女”も長すぎる。

「“月<ツキ>”とでも呼んでください。」

適当に頭文字をとったけど、案外悪くない。

「月か…。春陽さんにピッタリだな。」

淳治さんが私に笑顔を向けてそう答えた。

私にピッタリか。確かにそうかも。

太陽ほど私に似合わないものは無いけど、その対にいる月は私自身のようだ。

「分かった。月な。あと、また敬語だぞ?」

あ、やってしまった。

まぁ、慣れるまでは仕方ない。

「まぁ徐々に慣れてくれ。活動は明日からだ。日が沈んでから俺がonyxに迎えに行く。」

「よろしくお願いします。春陽さん。」

雪也さんからの笑顔もまた格別だ。

人からこんなに沢山笑顔を向かられたことも無い。

人の笑顔っていいな…。

なんとなく、ほんの少しだけど私の世界が明るくなるのを感じた。

目の前のにいるこの人たちが私の世界を照らしてくれる。

そして、なんだか暖かい。

私の人生、案外捨てたもんじゃないかもしれない。

久しぶりにそんなことを思える1日だった。
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