月下の少女
約束
春陽side
店のネオンが次々と消え、onyxの看板も消灯している。
私は店内に入り、フードを脱いだ。
「おかえりハルちゃん。」
「ただいま。片付けですか?」
中には閉店作業をしているマスターただ1人。
まだ瑞希さんは来てないみたい。
「うん。でも今終わったところ。ハルちゃんは今日はいつもより早いね。何かあった?」
「大蛇の話は聞いてますか?」
「関東連合のやつらから大体のことは聞いてるよ。」
「大蛇が、明日から動くみたいです。その関係で少し早く戻りました。」
「そっか。ハルちゃんもあんまり無理しちゃダメだよ?強いけど女の子なんだから。」
強いか…。
喧嘩は強いかもしれないけど、それ以外はダメダメだな、私。
マスターにもこんなに良くしてもらって、優しくしてもらえてる。
すごく幸せな事だし、信頼してる。
マスターにも、話そう。
瑞希さんももう少しでここに来る。
こんなにお世話になっている人に隠し事はもうしたくない。
いずれ、ここも出ていかなくてはいけないし、しっかり話しておこう。
そう思った。
「ありがとうございます。あの、マスター。少しお時間大丈夫ですか?お話があって。」
「話?」
「はい。これから瑞希さんもここに来ます。その話を一緒に聞いて欲しくて。」
「うん、わかった。ちゃんと聞くよ。」
マスターの顔は真剣そのもので、身につけていたエプロンを脱ぐと、カウンター席に腰掛けた。
私もマスターから3席ほど離れた席に腰かけ、瑞希さんを待つ。