月下の少女

「あ、ハルちゃん。これから行くの?」


「はい。」


マスターは作業を1度止めて私の方に近づいてきた。


「必ず無事に帰ってくること。分かった?」


柔らかい笑みを浮かべて私に語りかけるマスターは本当に私を大事にしてくれている。


暖かいし柔らかい空気を感じる。


「はい。マスターも気をつけて。」


「うん。行ってらっしゃい。」


「行ってきます。」


マスターからの行ってらっしゃいの言葉を聞き、私は夜の街に繰り出した。


日の出ギリギリまで巡回して、onyxに戻り日が沈んだらたまり場に行く。


それが予定通りに行くかは定かではないが、今のところその予定だ。


今のところ街はいつもと変わらない。


9月5日まであと5分。


日の出時間は5:16


私は大蛇が集っていた辺りを中心に巡回を始めた。


今のところ怪しいところは見当たらない。


表通りの明るさも、裏通りの静けさもいつもとなんら変わらない。


これから何かが起こるとは考えにくい程に。


武器を遠慮なく使う大蛇が何かを起こせば直ぐに警察沙汰になるだろう。


いつもの数倍気を張って私は周囲に目を向けた。


9月5日まであと1分…。


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