月下の少女
痛みと戦いながら私は死にものぐるいで仲辰夫の所まで走った。
「ち、弾切れか…。」
計5発。
普通の拳銃の弾丸数。
弾が交換される前に倒す!
私は限界まで力を振り絞り、右の拳を仲辰夫の顔面目掛けて振りかざした。
「ウ…ッ。」
パタン…ッ
仲辰夫はやはり口ばかりの人間らしい。
この人間になぜこんなにも人が集まってきたのか不思議なくらいだ。
私の渾身の一発で仲辰夫を気絶させ、この抗争は集結した…。
「ハァハァハァハァハァハァ…。勝った…。」
仲辰夫が倒れて数秒後、息も絶え絶えの私の体も限界で思わず膝を着く。
右足は弾丸をしっかり食らって血が結構出てるけど、お腹は掠ったくらいで済んだ。
上出来かな…?
左足は病気の症状が現れ、痺れが加速する。
もう、立てないかも…。
「春陽!おい、しっかりしろ!」
「大丈夫。それより仲辰夫ちゃんと拘束して?顔面殴っただけだからそのうち目を覚ます。所持してる武器とかないかも今のうちに調べないと。」
「それは昇と淳治がやってる。お前は自分の体の心配しろ。」
「ハハハッ確かに…。」
「瑞希これ使って。」
「雪也サンキュ。春陽、ちょっと痛いぞ?」
雪也さんがどこからかタオルを持ってきてくれて、瑞希さんが私の撃たれた足にタオルを巻く。
タオルをギュッと結ぶ瞬間、痛みが増して思わず顔を顰める。
「我慢するなよ。痛いんだろ。今病院に連れてく。」
「病院はいい。」
「はぁ?お前その怪我で何言ってるんだ。」
病院に行ったらまた実験台にされるでしょ?
そんなのいや…。
気がつけば遠くの方からサイレンの音が聞こえてきて、警察がどんどん集まってきた。
この惨事を見て更に救急車も数台集まってくる事態だ。