少女と過保護ーズ!![完]
ピーッ!!!!


初めて吹いたホイッスルの音は綺麗に澄んだ音だった。


が、感動する間もなく前歯が痛くてまた泣けた。


それまでの大爆笑はどこへやら、ホイッスルの音を聞いた桂が真っ青になって逃げ出そうとし、これまた真っ青になった井岡と有馬に取り押さえられた。


“黒豹”であれば皆、ホイッスルが鳴る意味を知っている。



『だっ!?ばっ!?お前ら離せっっ』


『イヤッス!!』


『チビ姫を泣かせたんッスから罪は償ってもらうッスよ!!』


『ハイネーーッ!!』




ドッカーーンッ!!


派手に何かが倒れる音。


駆け寄ってくる足音。




八雲さん……。

八雲さんだ……。


本当にすぐ来てくれた。




『ハイネ!!』




酷く慌てた、険しい表情の八雲さんが姿を見せた。



『何があった!?』


『『『『……』』』』



そこからがまぁ……大変だった。


泣くあたし、取り押さえられてる桂。


その場面だけ見ると……うん、ヤバイよね。



『八雲さ……』



ブザザザザーーッ!!



取り押さえてる井岡と有馬、取り押さえられてる桂が同時に器用に驚くほどの速さで退いた。


退きすぎてテーブルは動かすわ、椅子は薙ぎ倒すわ。


それは誰が直すと?



『ハイネ』


『八雲さん……』



いつの間にか、あたしの前に来た八雲さんがポロポロと流れる涙を拭ってくれる。



『少し待ってろ』



優しい声音でそう言った八雲さんは立ち上がると一歩前へ。
 


ズドンッ。


八雲さんが歩くたびにそんな音がする。


重い。



『貸せ』


『はいっ!!』


『はぃいっ!!』



直立不動、桂を捕まえたまま立ち上がった井岡と有馬が何故か敬礼して、桂を八雲さんに差し出す。



『あっ!?お前らっそれでも仲間っっ、オ、オチツケヤクモ……ハナセバワカル…』


『わかりたくもねぇな、ハイネを、泣かす野郎のことなんざ』



片言の桂に、八雲さんが嗤う……。
< 64 / 461 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop