伝えられない想い
「洸ー」
洸の部屋に入る時、いつもノックをしないで扉を開けてしまうのは私の悪い癖。目の前に広がった光景は、裸で抱き合っている男と女の姿だった。
「……失礼しましたー」
まるで何事もなかったように扉を閉めた。
「ちょっ。おい、……葉月!」
閉めた扉の向こうからは、洸の叫ぶ声が聞こえた。
「……またかよ、」
部屋を出て、小さく呟いた。
洸の女関係なんて今に始まったことではないし、いまさら驚いたりなんてしないけれど。こんなやつが幼馴染みだなんて、考えただけでも嫌気がさす。そんなやつを好きになってしまった自分自身に、もっと嫌気がさす。
……なんなのよ、こっちの気も知らないくせに。高校生が一体どれだけの女と遊んでいるのか。
「今の、誰?」
「…あ?ただの幼馴染み」
「なんだ。じゃあ早く続きしようよ」
甘い声で誘ってくる女。上に覆い被さって、目を細めた。もう、どうにでもなればいいとさえ思った。なにが正しくて、なにが間違っているかなんて。もうなにも、わからなかった。
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