追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください
第一章
「プリシラ・マロンドウィッチ! 夕刻に起きた魔獣襲撃事件の主犯である貴様を魔王討伐隊から追放する!」
魔王討伐隊のリーダー、シド・ローエンのテントに連行されたプリシラは、吐き捨てるようにそう言われた。
返す言葉を見失ってしまったのはいうまでもない。
夕刻に起きた「魔獣襲撃騒動」のことはプリシラも知っていた。
突如として現れた鹿の魔獣「ペリュトン」が討伐隊の野営地を襲い、隊に所属する傭兵に多くの死傷者が出たのだ。
仮設の炊事場で夕食の準備をしていたプリシラも救命措置に駆り出されたので状況はよく知っている。
だが──あの襲撃事件の主犯だと断罪される心あたりは何もなかった。
「ちょ、ちょっと待ってよ。魔獣襲撃事件の主犯って何のことよ?」
「フン! とぼけでも無駄だぞ! 貴様が魔獣を操る『魔女』だということはわかっているのだ! 魔獣を呼び寄せて隊を襲わせるなどと姑息な真似を!」
「はあ!? 魔獣を呼び寄せて襲わせた!?」
プリシラは頓狂な声をあげてしまった。
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